研究の背景と動機
白畑教授が低分子化フコイダンの研究を始めたのは、2002年に知り合いの医師から「低分子化フコイダン」を知ったことがきっかけでした。その医師は、末期がん患者に低分子化フコイダンを勧めたところ、腫瘍が縮小し、腫瘍マーカーも正常値に戻ったという驚くべき結果を目にしました。これに興味を持った白畑教授は、「水や食べ物でがんを治療する」という自身のライフワークに関連すると直感し、研究を進めることにしました。
低分子化フコイダンの構造と製造方法
低分子化フコイダンは、トンガ産のモズクを原料に、有機酸を用いて抽出し、分子量を通常の20万~80万から500以下に低分子化したものです。主要成分はL-フコースで、糖類や硫酸基も豊富に含まれています。安全性についてはエイムズ試験により遺伝毒性がないことが確認され、急性毒性試験でも異常は見られませんでした。
低分子化フコイダンの効果と作用
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免疫力の向上
低分子化フコイダンには免疫細胞を活性化し、がん細胞を抑制する効果が期待されています。そのメカニズムは、低分子化フコイダンが細菌と似た構造を持つことから、免疫細胞が反応して活性化すると推測されています。 -
血管新生抑制作用
がん細胞は増殖に必要な栄養を得るために新たな血管を作る「血管新生」機能を持っています。低分子化フコイダンには、この血管新生を抑制する効果が確認されており、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)の抑制効果も報告されています。 -
アポトーシス(細胞の自然死)誘導作用
低分子化フコイダンはがん細胞に選択的にアポトーシスを誘導し、正常細胞には影響を与えません。この作用はカスパーゼ経路やミトコンドリア経路を通じてアポトーシスを引き起こすもので、がん細胞の死滅に有効です。
抗がん剤との併用効果
抗がん剤と低分子化フコイダンを併用することで、副作用の軽減や抗がん効果の向上が見込まれます。例えば、シスプラチンとの併用実験では、シスプラチン単体よりも高いアポトーシス誘導効果が確認されました。また、他の抗がん剤との併用でも同様の効果が見られ、治療効果の向上に寄与しています。
研究発表と今後の展望
白畑教授はこれまで、低分子化フコイダンに関する研究成果を国内外の学会で発表し、その効果が多くの専門家から注目されています。カロリンスカ研究所でも研究発表を行い、高い評価を受けました。現在、フコイダンは医薬品として認可されていないため、治療効果を直接謳うことはできませんが、統合医療の一つとして評価され、今後の研究に期待が寄せられています。
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