プラセンタ注射は、美容や健康維持に効果があるとされ、近年注目を集めています。しかし、その効果や安全性について、様々な情報が飛び交っており、混乱している方も多いのではないでしょうか。
プラセンタ注射について、様々な根拠に基づいて、そのメリット・デメリット、安全性などを詳しく解説していきます。
そもそもプラセンタって?
プラセンタとは、女性の胎盤(たいばん)のことです。胎児と母体を繋ぎ、栄養や酸素を供給する器官であり、生命の誕生に不可欠な存在です。プラセンタには、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、成長因子など、様々な栄養素が豊富に含まれています。
動物由来のプラセンタの場合、農場にて飼育された健康な家畜(豚および馬)の満期出産時に後産として得られる食用の胎盤を指し、子宮などの外的器官は含みません。
プラセンタエキスなどは、このプラセンタを特殊な方法(後述で説明)によって分解した後、抽出された液体またはペースト状で加熱殺菌されたものを指します。
プラセンタの歴史は古く、古代から現代まで美と健康を支えてきました。例えば古代エジプトではレオパトラが若さを保つためにプラセンタを利用していたという伝説や、秦の始皇帝が不老長寿の薬としてプラセンタを服用していたという記録(「紫河車(しかしゃ)」という名で生薬として利用されてた記録が生薬として利用されている)、ヒポクラテスもプラセンタの薬効に注目し、医療に用いていたと言われています。
近代以降、19世紀後半になるとロシアのフィラトフ博士が、プラセンタの組織再生作用に着目し、臨床研究を開始。これが近代的なプラセンタ研究の始まりとされています。その後20世紀前半には、日本でもプラセンタ研究が進み、医薬品としての認可を取得、現在では美容や健康食品としても注目されるようになり、一般に広く知られるようになりました。
プラセンタが注目される理由
上記にもある通り、プラセンタには、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、成長因子など、様々な栄養素が豊富に含まれています。例えば医療機関で行われる治療ではこのプラセンタを注射によって直接体内に取り込むことで次のような効果を期待し治療を行っています。
- 美肌効果: 肌のターンオーバーを促進し、シミやシワを改善、肌にハリやツヤを与えます。
- 疲労回復: 新陳代謝を活発にし、疲労回復を促します。
- 更年期障害の改善: ホルモンバランスを整え、ホットフラッシュやイライラなどの症状を緩和します。
- 肝機能改善: 肝臓の働きをサポートし、解毒作用を高めます。
- 免疫力向上: 免疫力を高め、病気に対する抵抗力を強化します。
特にプラセンタ注射は更年期障害の治療に効果があるとして、日本では年齢45歳~59歳の女性の方については保険適応にもなります。
更年期障害の治療に
プラセンタには、様々な生理活性物質が含まれており、それらが複合的に作用することで、更年期症状を改善すると考えられています。主な作用としては、以下のものが挙げられます。
- ホルモンバランスの調整: 女性ホルモンの分泌が低下する更年期に、プラセンタがホルモンバランスを調整する働きを助けることで、ホットフラッシュやイライラなどの症状を緩和します。
- 自律神経の安定: プラセンタは、自律神経のバランスを整える働きがあり、不眠やめまいなどの症状を改善する効果が期待できます。
- 疲労回復: プラセンタに含まれるアミノ酸やビタミンなどが、新陳代謝を活発にし、疲労回復を促します。
ですが、注射部位の痛みや腫れ、アレルギー反応などの副作用が起こる可能性があったり、効果には個人差があるため必ずしも全員が効果を実感できるわけではない、という点で注意が必要です。
そのためプラセンタ注射注射をご検討の際は、必ず医師と相談し、自分にあった治療法を選んでいく必要があります。
プラセンタの種類について
プラセンタには、大きく分けて動物性プラセンタと植物性プラセンタの2種類があります。
動物性プラセンタは、哺乳類の胎盤から抽出したもので、一般的に知られているプラセンタはこの種類を指すことが多く、豚・馬・羊といった動物が由来のプラセンタや人間の女性の胎盤から抽出したものまで、幅広く存在しています。
それぞれの特徴は
- ヒトプラセンタ: 人の胎盤から抽出したもので、医療用医薬品として使用されることがあります。
- 豚プラセンタ: 豚の胎盤から抽出したもので、最も一般的な種類です。入手しやすく、コストも比較的安いため、多くの化粧品やサプリメントに配合されています。
- 馬プラセンタ: 馬の胎盤から抽出したもので、アミノ酸が豊富に含まれていると言われています。
- 羊プラセンタ: 羊の胎盤から抽出したもので、高品質で美容効果が高いとされています。
一方で、植物性プラセンタは、植物から抽出した成分をプラセンタと同様に作用すると考え、プラセンタと名付けられたものです。動物性プラセンタと比較して、アレルギーのリスクが低いという特徴があります。
例えば大豆由来のイソフラボン液は大豆胚芽に多く含まれるフラボノイドの一種で、植物性プラセンタとして使用されるケースがあります。
目的は様々ですが、一般的に美肌効果、疲労回復、更年期症状の緩和など、目的によって選ぶ種類が異なります。
プラセンタの抽出方法
プラセンタの抽出方法は6種類ほどあり、それぞれ①酵素分解法(こうそぶんかいほう)②塩酸分解法(えんさんぶんかいほう)、③アルカリ抽出法、④凍結融解法(とうけつゆうかいほう)、⑤精製水抽出法(せいせいすいちゅうしゅつほう)、⑥熱水抽出法(ねっすいちゅうしゅつほう)です。抽出される有用成分は、蛋白質、ペプチド、アミノ酸、核酸、糖などの成分です。
高品質なプラセンタを得るためにはメイラード反応という製造過程で生じる化学反応を抑制する必要があります。メイラード反応とは食品中のアミノ酸と糖が加熱されることで起こる化学反応のことで、例えば、お肉を焼いた時の焼き色や、パンを焼いた時の香ばしい香りなどがメイラード反応によって生じるものです。
プラセンタの抽出過程でメイラード反応が問題になることがあり、抽出過程で加熱処理を行う場合、アミノ酸とプラセンタ中に含まれる糖が反応し、メイラード反応が起こる可能性があるのです。それによってプラセンタの有効成分が変性したり、褐色化が進んだりすることがあります。
医療機関で使用されるプラセンタ注射では、製造過程でこのような反応がおらないよう、適切なプロセスを経て製造されています。
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